2024.02.18
レガシーシステムを脱却すべき理由は?脱却の方法とポイント
テクノロジーは絶えず進化し、日々新しいソフトウェアやハードウェアが日々誕生しています。古いシステム、通称「レガシーシステム」が稼働し続けています。
これらのシステムの中には、構築から20年以上経過しているものもあり、主にメインフレームなどの基幹システムとして利用されています。なぜこれらのシステムが時代遅れとされながらも使用し続けられるのか、どういった問題を抱えているのでしょう。
2018年に経済産業省から出された「DXレポート」でもレガシーシステムは問題視されており、日本全体でレガシーシステムからの脱却が急務とされています。
本記事では、レガシーシステムを脱却すべき理由と、脱却ための方法とポイントについて詳しく解説します。
万能なはずのシステムがなぜレガシー化するのか
業務を効率化するため、データを蓄積するために導入したはずのシステムがなぜレガシー化しているのか、なぜ時代遅れのシステムが使用され続けるのでしょうか。そこには次に示す理由が存在します。
システムが複雑化することによる、パフォーマンスの低下
古いメインフレームシステムは、不具合の修正や、新たな業務への対応のために改修され、機能を追加することは多くあります。改修や追加機能の追加の積み重ねにより、システムはますます複雑になります。
また、現在の業務プロセスに応じた拡張や柔軟な対応が難しい場合があります。そのため、システムが負荷に対して適切にスケールアップできないことがあります。
これらの要因が重なることで、システムのパフォーマンスが低下し、維持費用が増加することがあり、最終的にはシステムがレガシー化してしまう可能性があります。
システム構造に対するナレッジスキルの消失
レガシーシステムは、その特性上、古い技術やプログラミング言語に依存していることが多いです。システムを維持・運用するためには、それらの技術や言語に精通したスキルが必要となります。
しかし、新しい技術が次々と登場する現代では、これらの古い技術や言語を理解し、使いこなせる人材(ナレッジスキル)が減少しています。ナレッジスキルの消失は、システムの故障時に適切な対応ができない、システムの更新や改善が困難になるなど、運用に大きなリスクが生じるでしょう。
また、ナレッジスキルを持つ人材が退職や転職をすると、その知識が組織から失われ、システムの維持が困難になります。
管理を開発会社に一任しすぎている
専門的なシステムの運用と管理には、知識と経験が必要です。そのため、これらのタスクを開発会社に一任している会社も多いです。開発会社は、システムの設計と構築に関与した経験があるため、必要な知識とスキルを所有しています。
しかし、開発会社に管理を一任すると、組織はシステムに対するコントロールを一部失う可能性があるでしょう。自社内で技術が育成せず、開発会社なしにはシステムを維持・変更できない状態に陥いるため、システムを自社で自由に更新できなくなるリスクが生じます。
レガシーシステムを脱却すべき理由
新しいシステムを導入すると多額のコストがかかるため、多くの企業は保守的な姿勢をとりがちです。そのため、慣れ親しんだレガシーシステムから離れられない可能性があります。
企業がレガシーシステムを使い続けることで生じる問題や、脱却すべき理由はどのようなものがあるでしょう。6つの理由について紹介します。
システム管理できる人材が居なくなる(2025年の崖)
2018年に経済産業省から出された「DXレポート」では、「2025年の崖」という概念が注目されました。「2025年の崖」とは、日本の労働力人口が急速に減少しはじめることを指し、2025年にはIT人材不足が約43万人にまで拡大すると予測されています。この傾向が続けば、レガシーシステムを運用・管理するための専門的な知識や経験を持つ労働力が一層減少する可能性があります。
そのほか、DXレポートでは、多くの企業で利用されているERPの「SAP」の標準保守期限が当初2025年とされ、それも併せて「2025年の崖」の一要因として注目されました(現在は2027年に期限延長されたため「SAP」の2027年問題となっています)。
これにより、企業はシステムの更新や対応策の確立を急がざるを得ない状況に追い込まれます。
最新技術の追加導入が難しい
技術は日々進歩し、次々に新しいシステムが開発され、ビジネスの利便性は向上しています。この流れに対し、レガシーシステムは古い設計や構造を持つため、最新の技術やシステムを導入することが困難な場合があります。また、最新システムと互換性がなく、連携できないこともあるでしょう。
最新の技術を導入できないことで、ビジネスプロセスの最適化や、新しいビジネスチャンスの活用が難しくなる可能性もあります。
また、セキュリティの観点からも、最新のセキュリティ技術を導入できないことで、サイバー攻撃などのリスクにさらされる可能性があります。
障害が多発しやすくなっている
レガシーシステムは、新しい技術や環境との互換性が低く、システム統合や連携をおこなうことで障害が多発しやすい傾向があります。また、システムの運用・管理に必要なナレッジスキルが消失していくと、システムの正常な運用が困難になり、障害の発生率が上がるでしょう。
これにより、システムの稼働効率が低下するだけでなく、システム障害により顧客にも影響を与える可能性や、企業のブランドや信用を損なうリスクも考えられます。
システムのメンテナンスコストが増大している
レガシーシステムのメンテナンスには多大なコストがかかります。システムの障害対応やアップデート、セキュリティ対策など、維持管理に必要な作業が複雑で時間を要するためです。
システムが時代にそぐわなくなると、不具合が頻繁に発生し、メンテナンスコストが増加していきます。また、古いプログラミング言語に精通した人材や、システム運用・管理に関する専門的な知識や経験を持つ人材が減少していくことも、コストの増大につながります。
「ブラックボックス化」でシステムの更新が行えない
システムが長年にわたり運用され、さまざまな修正や追加が行われた結果、システムの全体像が把握しきれなくなり、「ブラックボックス化」しているかもしれません。「ブラックボックス化」していると、システムの内部構造や動作原理が不明なため、システムの更新を困難にします。
新たな機能の追加や既存機能の改善をおこなう際に、どの部分を修正すればよいのか、修正によりほかの部分にどのような影響が出るのかの予測が困難になります。
グローバル化に対応できない
世の中はグローバル化が進んでいますが、日本市場の限られた環境の中で経営をしてきた企業には、そのまま海外市場に出るのは容易ではありません。新しい市場に進出するためには、その市場の言語や文化、法規制などに対応したシステムが必要となります。
しかし、「グローバル化に対応できない」レガシーシステムでは、これらの要件を満たすことが困難となります。特定の市場や文化、言語に最適化されて設計・開発された結果、ほかの市場や文化、言語に対応するための柔軟性が欠けているためです。
DXによるレガシーシステム脱却の手法
レガシーシステムから脱却する方法として、マイグレーションとモダナイゼーションの二つの方法が挙げられます。
マイグレーション
マイグレーションは、古いシステムやプラットフォームから新しいシステムやプラットフォームへのデータや機能の移行をする方法です。具体的には、データマイグレーション、アプリケーションマイグレーション、クラウドマイグレーションのような種類があります。
データマイグレーションでは、既存のデータを新しいシステムに移行します。これにはデータのクリーニング、マッピング、変換などが含まれます。
アプリケーションマイグレーションでは、既存のアプリケーションを新しいプラットフォームやアーキテクチャに移行します。この手法では、アプリケーションのリファクタリングやリプラットフォーミングが含まれます。
クラウドマイグレーションでは、オンプレミスのシステムをクラウド環境に移行します。リホストの手法で、IaaS、PaaS、SaaSへの移行が含まれます。
モダナイゼーション
モダナイゼーションは、レガシーシステムを現代の技術やビジネスニーズに適合するように更新・改善する方法です。具体的には、次のような種類があります。
アーキテクチャの最適化では、システムのアーキテクチャを見直し、現代の技術やビジネスニーズに適合するように改善します。マイクロサービスアーキテクチャへの移行や、クラウドネイティブアーキテクチャの採用などが含まれます。
コードのリファクタリングでは、既存のコードを改善し、可読性、保守性、パフォーマンスを向上させます。コードの再構成、冗長なコードの削除、コードの最適化などが含まれます。
新しい技術の導入では、最新の技術をシステムに導入し、ビジネスの効率性や競争力を向上させます。AIや機械学習の導入、クラウドサービスの利用、DevOpsの採用などが含まれます。
マイグレーションとモダナイゼーションの違い
マイグレーションとモダナイゼーションはレガシーシステムを改善する主要な2つの手法ですが、異なるポイントとアプローチを持ちます。大きな違いとして、マイグレーションは「システムの置き換え」に焦点を当てているのに対し、モダナイゼーションは「システムの改善」に焦点を当てている点です。
マイグレーションは、データやアプリケーションを一つのシステムから別のシステムへ移行するプロセスを指します。通常、古いシステムから新しいシステムへの移行を含みます。ポイントは、新しいシステムが提供する改善されたパフォーマンス、セキュリティ、および機能を利用することです。
一方、モダナイゼーションは、既存のシステムを現代の技術やビジネスニーズに適合するように更新・改善するプロセスを指します。アーキテクチャの最適化、コードのリファクタリング、新しい技術の導入などを含むことがあります。ポイントは、システムの効率性、拡張性、および持続可能性を向上させることです。
DX導入でレガシーシステムをうまく脱却しよう
デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入は、レガシーシステムを脱却し、ビジネスの効率性と競争力を向上させるための重要な手法です。主要な方法であるマイグレーション、モダナイゼーションの適切な活用が、レガシーシステムを脱却し、ビジネスの成長とイノベーションを支えます。
組織のビジネスニーズ、目標、および制約を考慮に入れ、最適な戦略の策定が重要です。ビジネスの持続性を確保しながら、レガシーシステムからモダンなシステムへのスムーズな移行を実現することが、ビジネスの変革を実現するための鍵となるでしょう。
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